無糖

黒い蝶 白い花 過去の家

【黒い蝶 白い花 過去の家】

振り返る足跡は
雪解けの道を歩いたような
少しだけ土の色が付いた色でした

真っ白な雪な上を
歩ったつもりではなかったけれど
振り向いて俯いた足跡は
何処か懐かしくて
何処か寂しくて

何処か 恋しいものでした

ただ通り過ぎただけの道が
たったの3年間の時間が
こんなにも暖かいものだとは
想っても居ませんでした

足跡は一方通行ではなくて
どこか寄り道したように
同じ場所に何度も足踏みした足跡も
立ち止まりじたばたしたような
何かに駄々を捏ねたような足跡も

それはたくさん
たくさん
在りました


その場所へもう一度行くのには
どうしても一人では行けなくて
あの坂道
自転車を降りて
ふたり
歩くたった数分の時間の中で
ボールを打ち返す音や
体育館から見える光りを
じぃっと見つめて
時の流れを感じました

決められた空間が大嫌いだったころ
自由を求めて
彷徨いました

暗闇のまんなかで一人で居たころ
光りを求めて
大声で叫びました

その時の場所へ行く
曖昧な記憶を辿って
その時の風景が蘇り


何故 涙が出そうになったのでしょう



たぶん
2年前に来ても
見えなかったでしょう

きっと
1年前に来ても
見えなかったでしょう

いまだからこそ
見えた
優しいものとか

いまだからこそ
痛み出した
古傷とか


通り過ぎる いま生きるその命に
過去のじぶんを重ねて
わたしは
此処で
この場所で
生きてたと

ここにいたのだと

切れた糸が結びついて
蝶のように結びついて
ただ
ただ

どうしようもなく
宛てのない想いが
こころの中から
溢れ出してきて

わたしの足跡が見えて

笑って見ないふりをしました
でないと
泣いてしまいそうだったから


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