あたしだけのお医者さん






春人に抱きしめられると、ほら。





すぐ嘘みたいに苦しくなくなってくる。






ぽんぽんってリズムよく、背中に回された手で刻まれる。








「落ち着いた?」





春人の低くて甘い声。



自分でも目がトロンとしたのが分かった。







「うん…ケホケホッ


大丈夫…」




言葉とは裏腹に咳するあたしに、春人は苦笑い。









「ははっ(笑)

よし、じゃあ次喉だな。

はい、口開けて」







春人は側にあったかばんから喉を診るヘラみたいなのと、ペンライトをとりだして、あたしに迫る。







そのまま顎を軽く押さえられ「あ~ん」なんて言われたら、恥ずかしくても我慢するしかなかった。









少し口を開けると、





「もう少しおっきくあーんしような」





優しく微笑まれ、真っ赤になりながら大きく開けた。









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