カクレンボ



「この絨毯……恐らく血で固まっているんだ。この広さだ、沢山の人が殺されている」
「……!じゃあドアノブや煉瓦も……。ううん、それは奈々ちゃんじゃないかもしれないわ。女の子一人じゃ無理よ」



俺は僅かに納得した。新たな希望が芽生える。しかし……しかし、だ。俺は勇気を少しでも振り絞ろうと、込み上げる恐怖をごまかそうと引き攣った笑みを浮かべた。



「なあ、奈々ちゃんの名字って何?」
手に汗がにじむ。何故か野犬の声が静まり、辺りには俺の声しか響かない。奈々に聞こえているのではないかと幾度も背後に目をやる。



「はあ?後輩の名字くらい覚えなさいよ」
心臓の鼓動が早く、大きくなる。聞いてはいけない。



「中谷よ」



心臓の鼓動が止まったかと思う程一際大きく鳴った。
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