アイコトバ

始まりの鐘



    〜YUA side〜


―ガチャ


あの後、何事もなくいつもどおり家に帰ってきた。否、いつも通りで違う何かを感じながら…

「ただいま」

返事などないと分かっていても、どこか期待して言ってしまう言葉。

(なんか、虚しいだけじゃん)


両親は結愛がまだ幼い頃、行方が分からなくなっていた。一人では広すぎる家と結愛だけを残して。

身内や兄弟のいない結愛は今まで一人で生きてきた。その影響もあり、人と関わることを嫌い、注意深く、心を開かなくなってしまった。



お風呂に入り、なにをするでもなく、ただベッドの上で仰向けになっていた。


――…ンリン

―カランカラン


えっ?

閉じていた目を開け、周りを見渡すがなにも変わったことはない。

なんの音?


―リンリン…カラン


不思議な音は鳴り止まない。


鈴の音?…下駄の音?


ハッ!!

誰か近づいてくる!!


次の瞬間、


―リンッ


バッ


結愛は飛び起き、身構える。


「やあ。結愛姫、お迎えにあがりました。」


と言って、ニコッとわらった黒髪男。




*
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