大人になれないファーストラバー
日が完全に暮れた頃には、俺は家の近くの坂の下にいた。
いろいろあったが、ようやく家に帰れる。
今日はなんとしても一番風呂に入ってやる。
と思いつつ、自転車から降りて坂を登ろうとすると。
ポケットの中でケータイが振動した。
阿宮かなと予想しながらケータイを取り出して開くと、画面に表示されていたのは『蕾の家』だった。
『蕾の家』とは蕾の家の電話のことで、そう頻繁に使うというわけではないが電話帳に登録してあった。
通話ボタンを押し、耳に当てる。
『もしもし、おばさんだけど』
ケータイを持ってない蕾から極たまに「宿題教えて」とか連絡がくるからそれかもと思っていたら、なんと蕾のおばさんからだった。
「あ、はい。」
まさか蕾を泣かせたこと怒られるんじゃ…。
どきどきしながら、おばさんの応答を待つ。
『サクくん、今蕾と一緒?』
「え?」
どきどきが胸騒ぎへと変わる。
まさかあいつ、まだ帰ってないのか?