大人になれないファーストラバー


「取れた?」


「まだ」


「早く」




早く早く早く。
呼吸と動悸がそろそろやばい状態で、一刻を争う。

出来るなら即刻手を離して欲しかった。





「…まだ?」



見ればまだ取れそうにないことは分かるのだけれど。
咲之助の髪の毛が邪魔して自分でボタンと髪の毛の様子を確かめることが出来ない。




「まだ。」



不機嫌そうに言われ、思わず肩をすくめると。



「動くなよ」


と、ますます怖い感じに言われた。



「…ごめん」



小さく言って、けっこう真剣にがんばっている咲之助を見下ろした。




そしたら同時に咲之助も見上げてきて、寄り目になりそうなほど近くで目が合った。




今までならすぐに目を逸らしてたはずの咲之助が、今はじっとこっちを見ている。



どうしたらいいのか、動揺したのはあたしの方が先みたいで。
瞼を少し閉じて伏し目がちに下の方を見つめた。




はたとたどり着いたのは咲之助の唇。軽く結ばれたそれが、ゆっくりと動いた。



「蕾」




すぐそばにいるのに、なぜかその声は遠くから聞こえた気がして。

不安になって再び咲之助の目に視線を戻した。



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