大人になれないファーストラバー
観月が着いたのはついさっき。
熱射病になりかけたあたしは、部屋の畳の上に仰向けに倒れていた。
咲之助がタオルで扇いでくれていて、あたしはその風を受けながら目を瞑ってる。
鍵の故障か何かで6部屋あるうちの1部屋しか使えず、男女混合でその1部屋に泊まることになった。
阿宮は窓の外に見えた観月を入口まで迎えに行ってて。
白く薄いカーテンが揺れ、心地よい潮風が流れ込む部屋には、今は咲之助とあたしだけ。
ここまで来るのに何度か聞こうと試みたのだけど、阿宮がいるとなると話し出せなかったことがある。
それは、やっぱり…
「サク、あの時」
あのボタンから髪の毛を取ってくれようとした時のあのことだ。
「あ?」
扇いでくれるのに手だけ動かしつつ、部屋からわずかに見えるのだと言う水平線を、ぼーっと眺めていた咲之助はこっちを見ずに言った。
「あの時の、あれは…」
言った瞬間咲之助の手が止まる。
"あれ"だけで分かったのかと、目を開いて咲之助の表情を伺った。
「あれは、何?」
"あれ"で分かるのなら話は早い。
なんだったのか、即座に訊ねてみた。