大人になれないファーストラバー


約束の1時10分より少し早く待ち合わせ場所の階段に着くと。

まだ誰もいなかった。


階段を2、3段上がり、腰を下ろして待つことにする。




廊下の天井に取り付けられた時計を見上げると、あと1分半くらいで10分になるところだった。




もう一度呼び出されるようなことがあったかどうか考える。



ケンカなんかしないし。
どちらかといえば穏やかだし。
嫌われることは…自分が気づいてないだけでしてるかもしれない。



いったい。
俺が何をしたって言うんだ。




口を一文字に引き結び眉間に力を入れて、考え中なオーラをあからさまに撒き散らしていると。



ものさしで背中を掻きながら欠伸をして、職員室からタケちゃんが出てきた。






「あ」



はたと目が合うと、タケちゃんもクパッと口を開けた。




「おんめ、なあにやっとんこげなとこで」


「え、先生、もう一回言ってくれる?」




"タケちゃん"は生徒の間での呼び方で。
直接話す時はみんなちゃんと"先生"って呼ぶ。

要するに上手に使い分けてるわけだ。



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