大人になれないファーストラバー
タケちゃんはどこ出身なんだか未だに謎で。
キツめのその訛りを聞き取れるようになろうと思って勉強し始めた時期もあったけど、結局どこの方言か分からなくてすぐに断念した。
「だがらあ、なにやっとるんて」
「え? うーん…」
「まさがおめえ、嫁はんいるんに違う女と待ち合わせか?」
「よ、嫁!?」
俺は思わず立ち上がる。
階段下で神妙な顔つきのタケちゃんは、一瞬そっぽを向くと「図星か…」と小さく言った。
「違うっ」
"嫁=蕾"の式が頭のなかで成り立つと、なんだかきゅうに顔が火照った。
意外にそういうとこの勘が鋭いタケちゃんにバレたくなくて、眉間が小刻みに震えるくらい力を込めてシワを寄せた。
「ワシ、知っとんねんぞ。 職員室前の階段が神聖な告白スポットになっとることっ」
「いや、だからそんなんじゃないと思うからっ」
「なんやっ ちっとは自惚れんかいっ つまらんっ」
「別に先生を楽しませるためにここにいるんじゃねーよっ」
「なんやと小僧おっ」
熱くなったタケちゃんがついに階段を上がってくる。
俺はそれを向かうとうと腕を捲りあげた。