大人になれないファーストラバー
「よく分かんないんだけど。そっちが俺の下駄箱に手紙みたいなの入れたんじゃねーの…?」
「…はい?」
少し間を挟んでそいつは答えた。それになんだか状況が飲み込めてないような顔をしている。
「もしやハヤマ、橋本の幼なじみの下駄箱に手紙入れたつもりになってたんでねーか?」
入学してもうすぐ1年だって言うのに、他のクラスのやつは未だに名前が分からない。
タケちゃんがそいつをハヤマと呼ぶと。
なんとなく聞いたことのある名字と、何度かすれ違ったことのある顔とがようやく一致した。
手紙を突っ込んだ時のことを振り返っているのか、ハヤマのクールな顔つきがみるみる情けない表情に変わっていく。
そして、完全に間違ったことを思い出したようでぱっと目を見開くと。
いきなり床に膝をつき崩れ落ちた。
「俺としたことが…なんつーことをぉぉ…」
頭を垂れて、表情は見えないけれど。
声からして絶対に思い詰めた顔をしているに違いない。
女(蕾)を呼び出したはずが、なぜかその幼なじみの男が待っているなんて。
一番情けないパターンだ。
出鼻を挫かれた以上のダメージだろうよ。