砂漠の月歌 〜dream story〜

04 森は唄った





 朝から行方をくらましていた王子は、森の中を歩いていた。

何処へ行く訳でもなく、ただ道の続く方へと足を進める。



(……豆腐屋探すにも…街に行けば、
擦れ違う度に皆国王と俺の事を喋ってる…)


街の人々の憐れむ言葉や同情の声には、良い加減嫌気がさしていたのだ。



(……居心地が悪いったらないな…。)


可哀相だと言われ続ける自分に鼻で笑う。



(馬鹿らしい…誰が可哀相だと?
こっちは国王が
死んでせいせいしてるというのに…)


色々な事を考え過ぎて、考える事に飽きてくる。

今の自分を街の者が見れば、誰が王子と言えようか。



「……くだらない…」


“王子”という肩書きすら、今はどうでもよかった。
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