砂漠の月歌 〜dream story〜




……そこで初めて、王子は目の前の人物に目を奪われた。



「…!!」


湖の畔に立っていたのは、舞踏会で出会ったあの娘だったのだ。




━━━娘は美しく澄んだ唄声だった。




太陽がなければ

月は輝きを

持たないと

誰かが言った



聴いていて、とても心地良い唄声…。

まるで鳥のさえずりのような唄声に、王子は聞き惚れていた。




そんな言葉

月は望んでいなかった

その心に真実を



青白く輝く湖を背に、透き通る唄声は森を柔らかく包み込むように優しい。

しかしその唄は何処か悲しく、王子の心に響いた。




交差する光

私には眩し過ぎた



やんわりと風に靡く橙色の髪、澄んだ唄声、その全てが王子を魅力する。




だからどうか

夢なら醒めないで





━━━唄が終えると、娘はゆっくり瞳を閉じた。
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