砂漠の月歌 〜dream story〜
「王子と俺じゃ身分の違いもあるし…
それに、
小っさい頃から王子の性格見てきたけどよ、
王子はそういうの無関心っつーか…」
執事は続ける。
「でもよっ…?
自由気ままに宮殿を抜け出す豪快や、
メイド達にも気にかける繊細で…
そういうのって凄ぇー純粋だからだろ?」
真剣に話す執事の言葉に、王子は黙って耳を傾ける。
「だから俺は、
こんな素直な奴と仲良くなれたら
面白ぇーなって思ったんだよ。
もっと喧嘩して、話して…
……それで、いつか…」
そこで言葉が途切れてしまった。一番言いたかった言葉が出てこない。
しかし、ずっと小さい頃から思っていた事、王子に今初めて心の内を明かした。
「……なれたら、いいな…」
「え…、」
その呟きは少し小さすぎて、執事には聞こえなかった。
王子は少し間を置いてから、もう一度言う。
「いつか…
お互い本気でぶつかり合える兄弟に、
なれたらいいな…」
そう言って少しだけ執事の方に振り返り、嬉しそうに微笑んだ。