砂漠の月歌 〜dream story〜
執事が言いそびれたその言葉の続き、今度は執事の耳にもしっかりと届いていた。
「王子…」
思わず執事は涙ぐむ。
「これでは
どっちが年上か分かったものではないな…」
そんな執事に呆れたように、しかし何処か笑いを含みながら言う。
「……まぁでも、
一つお前と約束しといてやる。
もしこの先、
お前がへまして姐御にクビにされたら…
今度は俺が拾ってやろう」
それを聞いてまた執事は涙ぐんでしまう。
「言っただろう…?泣くのは後だ」
王子に言われて我に返り、パシッ!!パシッ!!と顔を叩いて涙を跳ばす。
「どちらにしても、
今この状況を何とかしなければ
それどころではないからな…」
宮殿の正門を真っ直ぐ見据える王子に、執事もゆっくり視線を向ける。
「……来たぞ」
━━━宮殿の正門には、沢山の黒装束の軍が遠くからこちらに攻め寄せてきていた。
あれが恐らく、ロゼオが引き連れる暗殺部隊なのだろう。
「嘘だろおい…」
その数の多さに呆然とする執事。
「おー…
見てみろ、宮殿の外壁が黒一色だな。
ははっ…あんなに引き連れて…」