砂漠の月歌 〜dream story〜
王子ですら僅かに顔が引き攣っている。
「……兵士達を街に送らせてよかった。
がら空きの街に攻め込まれでもしたら、
壊滅してただろうな…」
暗殺部隊は、宮殿を囲む外壁を覆い隠すようなまでの大勢だったのだ。
「おい…こんな事を聞くのは今更だが、
お前は本当に残って良かったのか?」
「ば、馬鹿言っちゃいけねーよ王子!!
このくらいの数屁でもねーぜっ」
精一杯の強がりだ。
「それに、
此処に残ったのは俺の意思なんだよ…
残ったからには、
全力で王子をサポートさせてもらうぜ!!」
強がりだが、執事の目に迷いはなかった。
「……そうか」
王子は薄く笑った後、覚悟を決める。
「さて…、」
ざっと見渡して約200人、宮殿の兵士と並ぶ数だ。
対して宮殿にいるのは王子と執事の二人だけだ。
「お前、戦えるのか?」
「当たり前だろっ!!」
待ってましたとでもいうように執事は自信げに答える。
「一応王子の身を守る為に
一通りの訓練は受けてんだ。
王子には劣るけどよ」
「いやお前それじゃ駄目だろうが」