†Devil Kiss†
これは現実なの?



悪魔なんて、おとぎ話の登場人物でしか見たことない。


ううん。きっと、誰も見たことなんてない。




「ローズ?大丈夫?」



アリスが首を傾げる。



アリスの声で我に返り、これが現実なのだと、自覚する。



「ごめんなさい。これが現実なのか、わからなくて。」


「無理ないよ。悪魔なんて、人間は神話やおとぎ話でしか聞かないっていうもんね」



ローズは頷く。



「でもね、これは現実なの。それから、頭を整理する暇もないほど、今は深刻な状況よ」



アリスの可愛いしゃべり方が真剣な口調へと変化した。



「ユハのことだけど・・・これはローズにとって酷かもしれない話し。でも、信じて彼があなたを心底愛していたことに変わりはないから」


「ユハ・・・・」



ローズはゆっくり顔を上げた。




それからアリスは、今までのことをローズに話した。



「あたし達の世界からは、人間界をMoonlakeという湖から見ることが出来るの──────




ユハは毎日、そこからあなたのこと見てたの。


そしてユハは、自分でも気付かないうちに、あなたに恋をしていった。


心を持たない悪魔が、誰かに愛情を感じるなんて、魔術のように不思議で不可解なことなんだよ。


でも、その想いを止めることが出来ず、ユハは薬を飲んで、あなたのもとに魔界を出た。



< 111 / 149 >

この作品をシェア

pagetop