ストレイ・ハーツ〜夢みる王子のねがいごと〜
「うーちゃん、ねむい?」
「さっきまでは眠かったですけど、流石にぶっ飛びました」
リオの発言や行動は確かにマイペースで気侭だったけれど、今回ばかりは心底驚かされた。
この人自分のこと女と思ってないんじゃないだろうか。
そう思うとわずかに口調に棘が混じるけれど、だけどリオは気にする様子もなくじっとこちらを見つめている。
やわらかなふとんを頭まですっぽりかぶったリオのいたずらな瞳に、うららの作る隙間から届く月の光が揺れて、なんだかくすぐったい気持ちだった。
だけど体と体の間に空けた空間を、うららが見せた僅かな警戒を、リオは決して侵す様子はなく。
正直言ってうららも身の危険だったりとか、そんなものは微塵も感じなかった。
リオは気侭でマイペースでたまに常識やぶりだけれど、そんな人ではないと知っていたから。
一瞬のような永い沈黙の後。
リオがぽつりと、零した。
「昔話をしてもいい?」
視線を向けたリオの瞳に、もう月の光は届いていない。
うららはただ声もなく、頷いた。