【短編】距離の仲
「いいよ別に」
「いいの?」
「あぁ、もういい」
「ん~つまんないなぁ」
つまるもつまらないもないだろ。
憂さでも晴らすみたいに胸の中で悪態をつく。
まぁ憂さ晴らしにはならないけれど。
「あ」と加奈が声を上げた。
見れば、夕陽を背にして後ろ向きに自分の影にはしゃいでいた。
「危ないぞ加奈」
注意するが言った所で止めるとは思ってない。
加奈は両手を頭の上に乗せる。
すると影も同じ動作を見せ、地面に奇妙な影を描いた。
「昔二人でやったよね。影遊び」
加奈が作り出した影は先端が目玉みたいに見える。
事実、加奈は目玉に見立ててる訳だけど。
「ほら。私一人にやらせてないで諦もやってよ」
「は?何でだよ?」
「いいからいいから。一緒に懐かしもう」
悪態をつきながらも促されるままに僕も影で目玉を作った。
けれど微妙に位置が合わない。