原色ヤンキーにメガネ
ガラガラ……。

教室のドアが開く度に先刻と同様なセリフが飛び交う。

『おはよ。ちょっとぉ、勉強したぁ?』

『おはよう。葉月ィィ。今日遅くない?あ、勉強?してないよぉ』

なぜ、同じセリフを吐いた良子が『なにかあったら』と言われて、あの黄色い声の女の子達が『なにかあったら』と言われないのか。

「…………ふッ」

良子が自嘲気味に視線を窓の外に移した時、始業式のために体育館へ移動するように校内放送が流れた。

単語帳や小さなカードを制服のポケットに忍ばせていく生徒達の流れに良子は身を任せた。

体育館の入り口前で流れは一旦止まる。

とその時

「……い澤ッ、相澤ッ」

「……はい?」

声のする方角へ視線を走らせると、体育館の入り口で担任の古田が良子を手招きしていた。

「……私?」

「他にいないだろ?ちょっと来て」

そう言うと古田は生徒達の流れに逆らって歩いて行ってしまう。

そしてたどり着いたのは小さな教室。

「ここ入って」

(……生徒……指導室?)

別名『取り調べ室』。

(なぜに?)
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