原色ヤンキーにメガネ
坂道を下った真っ赤な自転車はその勢いのまま良子の自宅まで走った。

「じゃあな」

「ありがと。じゃね」

軽い挨拶のあと、ギコギコ音が少しずつ小さくなり、真っ赤な頭が見えなくなると良子は家に入った。

そして自室の本棚を眺めた。

(私に出来るかなぁ?)

恋愛経験値が限りなくマイナスに近い良子。

そんな自分が恋愛モノが主流な携帯小説を書く。

そんな事は考えた事もなかった。

自分が携帯小説を書く側になれるなんて。

(出来るのか?)

右手をジーンズのポケットに入れる。

『若い俺らにゃ失うモンなんてねーぜ!』と玉置の声が聞こえた気がした。

そしてポケットから携帯電話を引っ張り出した。

< 60 / 271 >

この作品をシェア

pagetop