危険な誘惑にくちづけを
「勝利宣言」

「なによ、それ!」

「春陽ちゃんは、オイラのモノだよって、彼氏に言っちゃおうかな?」

 じ……冗談じゃない……!

 その言葉に、真っ青になった。

 なんとか携帯を佐倉君から取り上げようと、必死になって、手を伸ばす。

 けれども、佐倉君は。

 わたしの手を簡単に振り払うと、自分が最初に電話に出ようとして、二つ折りの携帯を伸ばした。

 それから、いそいそと、着信相手の名前を、確認して。

 ……そして。

 急に、やる気を失せたように、携帯をわたしに放ってよこした。

「……なんだ、つまんねぇ。
 彼氏じゃないじゃん。
 ……女の子からだよ、春陽ちゃん、出な」

「……え?」

 佐倉君に言われて、自分の携帯電話を確認すれば、そこに。




『篠原 薫(しのはら かおる)』という名前が、輝いていた。







 
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