危険な誘惑にくちづけを
 でも、薫ちゃんは、そんな佐倉君の事を気にせず、私に話す。

「……それで、ね。
 あたし……実は。
 そこで、出会ったコと仲良くなって。
 今回、日本に連れて来ちゃったの。
 本当なら、これから皆で一緒に、観光めぐりでも出来たら、いいなって思ってたんだけど、ねぇ」

 言って、薫ちゃんはため息をついた。

「紫音の行方が判らないでしょ?
 日本での、ココロ当たりを一周見て回ってこようと思うんだけど……
 ……中には、あたし一人で行った方が良いところが、いくつかあって。
 日本に慣れてないコを、連れまわすわけには、行かないの。
 だから、春陽ちゃんには。
 荷物と一緒に、そのコを預かっていてほしくて……」

 本当に突然で悪いんだけど、できるかな?

 って言う薫ちゃんの言葉に。

 私は、すぐに、うんって頷いた。

 紫音の、日本での居場所、なんて。

 わたしの部屋と。

 ガッコの先生だった頃に、買ったっていう。

 今は、立派な荷物置き場代わりになって、寝る場所もない紫音の部屋と。

 あとは、大金持ちの紫音の実家、ぐらいしか知らない。
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