危険な誘惑にくちづけを
 
 前から。

 紫音が、その強く輝く瞳を閉じて眠っているときは。

 いきなり、若く……というか。

 わたしと、そう変わらない年に見えるほど、年齢が下がって見えていた。

 だけども、今。

 病室のベッドで眠っている紫音は。

 最後に会ったときから、そう時間が経っていないのにもかかわらず。

 すっかりやつれて、もっと年下の少年のようだった。

「……紫音!」

 思わず、そんな。

 大好きなヒトの名前を呼んで、近づこうとしたわたしを、黙って止める人がいた。

「放して! 薫ちゃん!
 わたし、紫音の側に……!」

「……今はだめだ、守谷。
 それに、オカマは、部屋を出て行ってもらった」

 ……え?

 わたしのコトを、守谷って。

 薫ちゃんのコトを、オカマって言うヒトなんて……!

 てっきり、わたしを引っ張って、止めたのは薫ちゃんだと思っていたのに。

 本当の相手を見て、わたしは驚いた。





「……加藤先輩!」
 

 
< 138 / 148 >

この作品をシェア

pagetop