危険な誘惑にくちづけを
 
 そう。

 それは、わたしの初恋の相手で。

 わたしが思い切って、告白したとき。

 その場ですぐ断った……なんて思い出がある、サッカー部の加藤先輩だった。

 実は、加藤先輩には、このとき。

 お腹に赤ちゃんのいる彼女がいて。

 後から生活費を稼ぐために、紫音の経営するホストクラブで、アルバイトをしたんだ。

 先輩の将来の夢は、店№1のホスト、ではなく。

 看護師さんとか、介護師さんとか、弱いヒトを助ける職業につきたい、といっていたけれど。

 どうやら、願いは、叶ったみたいで。

 真っ白な、ここの病院の制服らしい白衣を着て、わたしの腕を掴んでた。

「よ、久しぶり。
 ……本当は、こんな風に会いたくなんて、なかったんだけどな」

 そう言って、加藤先輩は苦く笑った。

「加藤先輩!
 どうして、ここに!」

 例え、夢の職業を手に入れたとしても。

 このタイミングでここにいるなんて、出来過ぎで。

 驚いて聞くわたしに、先輩は、がしがしとアタマを掻いた。

「……紫音さんとは、今までも、ずっと連絡を取り合ってたからだ」

「……え?」
 
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