危険な誘惑にくちづけを
 佐倉君は、低くうめくと。

 今までずっと、むさぼる様にしていた、わたしのカラダから、ようやく、完全に唇を離した。

「……春陽ちゃん……
 オイラの話……聞いてくれる……?」

 ふ……と。

 少しだけ。

 いつもの佐倉君に戻ったような、気がした。

 その感じに励まされるように、わたしは、佐倉君に言った。

「……うん。
 ……だけど。
 こんなカッコじゃ……佐倉君の話……ちゃんと、聞けないよ……?」

「……あ」

 まるで。

 言われて初めて判ったかのように。

 佐倉君は、わたしを抑えつけていた手を離し、胎内深くでうごめいていた指を引きぬいた。

「ふ……あっ…」

 抜かれる指の刺激に、思わず出てしまう、あえぎ声を噛み殺し。

 ぼろぼろの服と、解放された腕を使ってようやく。

 佐倉君の目から、素肌を隠すことができた。

 その、思わずやってしまった、佐倉君の手からすぐに逃げ出したような動きに。

 佐倉君は、何か察して、皮肉げに微笑んだ。

「……もしかして。
 今、春陽ちゃんが、言ったことって、ウソ……?」

「……!」
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