危険な誘惑にくちづけを

「オイラ。
　けっこう、これでも気は、長い方なんだ……」

　佐倉君は、わたしに手を触れずに、ぐぃと近づいた。

「……春陽ちゃん」

「……な、何？」

「また、今度……日を改めて、君に触りたい……って言ったら……
　今日みたいに、最後までイかなくても、触らしてくれる……？」

　二度と、あるわけないじゃない、こんなコト！

　そう、叫びたいのを押し殺して、わたしはささやく。

「き……機会があったら、ね？」

「……ウソつき」

「……！」

　佐倉君の目がわたしを見透かして光る。

「春陽ちゃんて、本当はとってもウソつき。
　オイラから逃げるために、話を適当に合わせようとか思ってない？
　本当は、早く帰れ、とか思ってるでしょう？」

「そ……そんなコト……！」

　図星を刺されてしどろもどろのわたしに、佐倉君は意地悪く笑った。

「じゃあ、機会があったら、してもいいんだ？」

「う……」

　絶対『うん』なんて、言えなかった。

　けれども、佐倉君は、わたしの中途半端な返事に満足そうにほほ笑むと、言った。