怖がり少女と吸血鬼
その最も居づらい雰囲気を破ったのは、シードさんの場違いともいえる明るい声。


「おおっと!ちょっと待って、ストップストップ。俺、そんなに戦闘能力高くないの知ってるでしょ?」

クスクス笑って、両手を前に出して黒沢くんをなだめるようにシードさんは言う。


「じゃあ、俺を怒らせないことだな」


それでも黒沢くんの怒りは収まりそうにない。

ていうか、シードさんのふざけた言い方のせいで、ますます怒ってない?


「そんな無茶な」

でも、シードさんは相変わらずクスクス笑いながら話し続ける。



あぁああシードさん、お願いだからそれ以上黒沢くんを怒らせないで…


あたしはシードさんの言動にヒヤヒヤしながら、二人を交互に見つめていた。
< 109 / 129 >

この作品をシェア

pagetop