天使になれなかった。


いつまで、こうしていたのだろう。

いつのまにか夕日が消えて、月が姿を現していた。

あたしたちは地面に寝そべって星のみえない空を見上げていた。


月がぽつんと浮かぶ暗闇、月の周辺だけが明かりで白色がかっている。

フェンスの向こうにはネオンがギラギラ輝いて安っぽい光を膨大に放出している。

眠らない街。

眠れない人間。


「……小学生の頃、宇宙飛行士になりたかった」

凛羽が突然口にした。

「将来の夢?あぁ小学生の頃って何かと将来の夢を作文とかで書かされたよね」

「絶対なれるって信じて疑わなかった。むしろ宇宙飛行士以外のことをしている自分なんて想像できなかった。だけどいつの間にかその夢は消えてたんだ」

「………」

「なんでだろう?大人になるってそういうことなのかな?」


あたしを抱いた、権力と金を持て余している奴らは子供のとき何を夢見ていたんだろう?

彼らはそれを叶えることが、できているのだろうか。

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