天使になれなかった。


蓮見に連れてこられたのは、あたしがよく親父と会うときに利用するホテル街だった。

賑わう街のはずれにあり、此処だけが他と違う怪しい雰囲気で充満している。

それはきっと暗黙の了解で。

吸い込まれるように消えていく男と女。


「こんなとこに連れてきていったいなんのつもり?」

「シーッ!黙って」


蓮見はコソコソと壁に隠れている。
どうやら誰かを尾行しているようだ。

蓮見の視線をたどると、ハゲ頭の親父と派手な雰囲気の女が腕を絡ませあって歩いていた。

息を潜めて親父の行く先をみつめる蓮見。

鋭い視線。

獲物をみつけた肉食獣は、すぐに捕らえようとせずにチャンスを待つ──今の蓮見をみていると、そんなことを思い出した。

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