天使になれなかった。
風呂からあがると、脱衣所に乾いた制服が置かれていた。
いつの間にか凛羽が乾燥機にいれてくれていたのだ。
あたしはまだほんのりと暖かさの残る制服に身をつつむ。
リビングの扉をあける。
緊張するのは、いつもの癖。
あたしにとってリビングの扉は地獄に用意された消滅の扉と同じようなもの。
現世で罪を犯したものが地獄に突き落とされ、消滅の扉をくぐる。
扉をくぐれば、もう二度とその存在を確かなものにすることはできない。
「あ、湯加減はちょうどよかった?ココア作ったから飲んでいけよ」
凛羽のほがらかな笑顔に胸を刺すような心臓の爆発音が一気に静まっていった。