運命なんて信じない。


「……え?わ、え?」


右腕の温もりに驚いて顔を上げる暇もなく、腕を引っ張られ無理やり立たせられました。


そのまま引きずられるように、店の外に連れて行かれます。


右肘の上あたりを左手で掴まれる形になっているので、サリは彼の背中を見る事しかできません。


彼の表情が見えない事が、こんなに不安になる事だなんて思いもしませんでした。


「ウ、ェン……ズ……?」


色んな物に躓きながらも酒場を出たサリと、それを引くウェンズ。


太った月の所為で夜空の星が少し霞んで見えます。



酒場から出て5メートル程離れた所まで来た時、ウェンズがおもむろにサリの手を放しました。



月光に照らされた事によって、彼の整った顔からいつもの人懐っこさが消え、妖艶な雰囲気を醸し出しています。


口角だけを無理やり引き上げただけの微笑みで、彼は言いました。



「アンタにチャンスをあげようか?」




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