運命なんて信じない。


サリは、俯いて彼の顔を見ないようにしました。


これ以上彼を見ていたら、涙が零れてしまいそうだったからです。


(あたしが泣いて、どうするんだ……ッ)


――彼の方が、きっと……もっと傷ついてる……


根拠もへったくれも、無い。

傷ついてる理由だって、分からない。


それでも全てを諦めたような彼の目を見ていると、何故かサリが悲しくなってくるのです。


コツッ、コツッ、コツッ


コツン、とサリの目の前で足音が止まりました。



サリは俯いたまま目を閉じて、更にキツく唇を噛みます。


彼女には、もう覚悟ができていました。


(あたし、きっとウェンズに殺されるよね。本人の前で「アンタ殺します」みたいな事言ったんだし。“殺られる前に殺れ”だよ、人間。

実際、あたしがウェンズでも、殺してただろうしさ

ウェンズに文句を言う権利、あたしには無いよ……)


サリの頭に、ふと願望のような想いが浮かびます。


――もし、あたしが……父さんから何も背負わされていなかったら。


――もし、あたしが王家の人間なんかじゃなかったら。




――あたしは、彼とずっと一緒にいれたかなぁ……?




ガシッ





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