運命なんて信じない。


彼は、最初に向かってきた手拭い男の右手首を蹴り上げました。

男の長剣がくるくる回りながら飛ばされます。


「チィッ!!!」


賊が忌々しそうに舌打ちをして、チラッと余所見をする一瞬の隙を彼は見逃しません。


「らあッ!!!」


ドッ

「……ぐぁ……ッ…」


一気に間合いを詰めて、鳩尾に体の捻りを効かせた左拳を叩き込みました。
辺りに、雨の音と一緒に鈍い音が響きます。


バキッ


更に彼はふらついた賊の顔に、上段蹴りをお見舞いしました。賊は後ろへ倒れこみ、後頭部を強く打って気を失ったようです。


「あっらー、呆気ね――」


眉尻を下げて小さく溜め息をつきながら、彼は賊がさっき落とした剣を拾い、左手に持ちます。


「あー、濡れてて持ちにく――」


(なんてマイペースな人なんだろ……)


サリは、さっきこの人の心配をした事を少し後悔しました。


(心配するだけ無駄だったな……。あ、いや、でも一応助けてもらったし)



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