不器用なLOVER
22nd circumstance
それを軽く受け止めて、

「でも顔が倍に腫れ上がってて」

両頬に空気を溜めて膨らます。

「俺のとこ来てさ『僕、彼女とは面識ないはずだけど?』って」

眼鏡を指で押し上げる真似で、

「無表情にさ『二度と顔も見たくないそうだよ』んだけ言って行きやがんの…」

又だ…。
長い睫毛が一瞬陰を落とした。

「俺に文句一つ言わねぇでさ…」

それが寂しいって言ってるみたいに聞こえた。

「もう…透弥さんの名前で遊ぶの止めてください」

さっきの興奮も冷めて私まで、
トーンダウンしてしまう。

「そりゃ無理かな?」

朋弥さんの悪戯な笑顔の向こうに

「俺がそれをやってんのは前にも言った通り透弥への細やかな復讐だからね」

【全部ぶっ壊してやる名誉名声】

何時かの悲痛な叫びが蘇る。

「朋弥さんだって傷付くのに?」

本音は透弥さんが凄く大切な存在だからパートナーだって言われたこと嬉しいはずなのに。

「俺は傷付かないよ?」

「嘘。透弥さんの側近に戻りたいって思ってるでしょ?」

こんな風に主君の栄誉に泥を塗り続けたりしたら絶対ダメなんだから…。

「ん〜、側近役に固執してるわけじゃねぇんだけどな…」

困ったように眉尻を下げて、

「役から外れたところで気持ちは変えらんねぇしさ」

両腕を頭の後ろに組む。

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