不器用なLOVER
24th affection
残り50m…

杞憂に変わる瞬間。

透弥さんの躍進劇が始まった。

それは…、今までの走りが如何に余裕を見せたものだったのかを、思い知らされる嘘の様な猛進で。

差がみるみる縮まって行く。

その追撃に瞬きを忘れ魅了され、

美しい一匹の猛獣が獲物に狙いを定め翔び掛る幻影。

無駄な動きを一切感じさせない、洗練されたフォーム。

その姿に魅入られていたのは、
私だけではないはずだ。

圧倒的な存在感に、
心を奪う優美さ。

人を惹き付ける魅力を兼ね供えた
これが宮原透弥という人なのだ。

ホントは私が簡単に近寄れる様な人なんかじゃない。

宮原グループの御曹司とか、
身分違いってことじゃなくて、
取り巻く環境の違い。

選ばれた人とはこれ程までに風雅なものなのなのだという現実を、目の当たりにし突き落とされる。

ゴール前で遂に、

透弥さんが朋弥さんに並び、

息を飲み見守る中で、

僅かな差でテープを切った。

透弥さんの勢いに手放されたテープ

何も考えられなくて溢れ出す涙もそのまま透弥さんを唯見つめる。

私の元へ真っ直ぐ帰り、

「ただいま…晶」

その腕に引き寄せられ、

「本当に泣き虫なんだから…」

胸に閉じ籠められる。

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