不器用なLOVER
目の前で止まる足音に見上げれば

「晶」

目尻を下げ優しく微笑みを浮かべ私に差し出された手、

その手を取ると力強く握り締め、彼女に言った。

「写真は返してもらうよ」

「何なんですの?」

彼女の怒声に、体が跳ねる。

握った手から引き寄せ、

「強姦未遂又は強制わいせつ罪、貴方の場合は犯罪示唆に脅迫罪の決定的証拠だ」

みるみる顔が青褪めていく。

「例え、パソコンに落としていたとしても、もう役には立たないよ。僕達は闘う」

力なく頭を振り、

「そんなことしてませんわ。写真はそこにあるだけです」

「そう。この写真は消させてもらうよ」

黙って項垂れ、

「どうして分かりましたの?」

小さな声で訪ねる。

「あの時、
晶に電話を切られて、
最初は忙しいのかと思った。
けど…掛ってきた電話は、
晶を脅迫するところで、
駆け付けた時の晶を見て
直ぐに理解したよ」

「そんな…」

その場に崩れ落ちる。

「場所は防犯カメラの死角でも、その場に誘導する貴方はしっかり映ってたよ」

彼女に携帯を突き付け、

「金輪際晶には近付くな」

踵を返し、歩き出す、

繋いだ手を離さずに。


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