不器用なLOVER
頭の中は傷付くのを怖がる私が、心の中にまだ消せない想いを抱える私を、突き放せずに苦しむ。


「宮原様ったら、急にどうなさりましたの?」

彼女の声に身がすくむ。

「話があるだなんて」

その声を頼りに姿を探す。

道の外れに佇む二人、

「二人きりになりたかったんでしたら、此処でなくても構いませんのよ?」

彼女が彼の胸に手を置く。

二人から死角になる、
木陰に近付き隠れた。

透弥さんの目がこっちを見据える

バレたかな?

高鳴る鼓動を抑え、息を殺すが、

「携帯…貸してくれる?」

いつもの単調な声が聞こえた。

「携帯ですか?」

胸に手を置いたまま、頬を埋める

近付かないでよ。

叫び出したい感情を噛み殺す。

透弥さんは彼女の肩を押して頷く

「赤外線通信なさいますのね?」

透弥さんの態度に余裕で微笑みを返し、

携帯を取り出して渡した。

あの携帯には…、

透弥さんには見られたくない写真が入っている。

どうしよう…。

「使い方分かりますか?」

彼女の差し出した手を制止、
一歩後退する。

ピッピッと携帯のボタン音が、
聞こえる。

「宮原様のも教えて頂けます?」

彼女が足を踏み出すより
一瞬早く

私に真っ直ぐ向かって足音を、響かせる。

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