不器用なLOVER
繋いだ手がいつもより暖かい。

騒ぐ鼓動も心地いいリズムを刻んでる気がする。

「…透弥さんのエッチ」

通り向こうから聞こえる甘ったるい媚た声…。

今透弥さんって言った?

何気無く視線を送ると、

必要以上に密着する男女がこちらに向かって来るのが見える。

「ヤダ透弥さんってば…」

その名前に思わず反応してしまう

透弥さんを見上げればやっぱり、二人を注視していた。

「朋…弥?」

透弥さんの呟きに凝視すれば確に眼鏡を掛けてるけど朋弥さんだ。

何で眼鏡?

っていうか…パッと見二人はよく似てる。
背格好といい顔立ちといい。

まあ透弥さんの方が品が良くて、美形だけどね。

見続けられ視線に気付いたのか、朋弥さんが顔を向けて片手で顔を被った。

「透弥さんどうしたの?」

隣の彼女の声に、

「よぉ。朋弥」

朋弥さんが透弥さんに手を挙げ、近付く。

透弥さんは眉を潜め無言のまま、朋弥さんを迎える。

「えっ透弥さん?」

事態の飲み込めない私は、二人を見比べるだけで…。

「何だよ朋弥、お前も晶ちゃんとデートかよ?実は俺も何だよ」

それは何と無く肩を抱いて歩いてれば分かるけど。

「コイツ俺の従兄弟の朋弥」

彼女に透弥さんを紹介した。

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