恋人は専属執事様Ⅰ
「あら河野さん、もう新しいお嬢様探しですの?」
傍観者を決め込んでいた二階堂さんがいきなり口を挟んで来た。
「松本さんも気を付けた方がよろしくてよ。河野さんは仕えるお嬢様を次々と変えることが趣味ですの」
そう言った二階堂さんにジロリと睨まれた河野さんは、やっぱり人懐こい笑顔で
「二階堂様、そのような人聞きの悪いご冗談はお止めください。こちらのお嬢様に誤解されてしまいます。漸く末長くお仕え出来るお嬢様に巡り会えたのですから」
と華麗にスルーした。
すごい…二階堂さんの嫌味にダメージを受けないなんて!
「他のお嬢様にもそう言っていらしたわよね?わたくし、河野さんが仕えたお嬢様たちと仲がよろしいのですわよ。何でしたら今、こちらに皆さんをお招きしてもよろしくてよ?」
二階堂さんの恐喝まがいな言葉に、流石の河野さんも眉尻を下げながら、それでも
「それではお茶会のご用意をしてから改めて伺います」
としっかり反撃してから
「お嬢様、お茶はまた後日に…本日はこれで失礼いたします」
と私に再会をアピールして、一礼すると去って行った。
はぁー…なんかすごい人だったな。
呆然としてる私に、また別の執事候補生が話し掛けて来た。
「失礼いたします、お嬢様」
ちょっと憮然とした口調に驚いて顔を上げると、目の前に立っている執事候補生と目が合った。
「秋津君!?」
間違いない、私の目の前に立ってるのは秋津新(あきつあらた)君。
小中と通っていた塾でずっと同じクラスだったから間違える訳がない。
出来の悪い私にいつも文句を言いながら、問題の解き方を教えてくれていたっけ。
「1年の秋津と申します」
秋津君は一礼すると、慣れた手付きで紅茶を淹れて
「Harrodsのダージリンギエーレでございます。先ほどフルーティーなフレーバーティーをミルクで召し上がっていらしたので、お口直しにさっぱりとしたものをご用意させていただきました。繊細な香りと味に相応しいボーンチャイナの器でお楽しみください」
そう言って秋津君はスッとカップを私の前に置いた。
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