ボーダーライン

 バイトもない穏やかな休日が始まって三日目。

 夜中に親父の車でコンビニに行くと、同じクラスだった女の子、大塚さんがバイトをしていた。

「あれ? 迫戸君じゃない。久しぶり」

 向こうも俺に気付き、他に客がいなかったのもあって立ち話になった。

「東京行ったの、うちのクラスは迫戸君と真紀だけだったよね」

「そうだっけ?」

「そうだよ。真紀とたまには会ってるの?」

 何も知らない大塚さん。

 たまには……か。

 俺の部屋にいるなんて言うと変な誤解を招くに違いない。

「うん。会ってるよ」

「そっか。仲良かったもんね。色んな噂も立ってたし」

「噂?」

 そんなの、男子の俺の耳には入ってこなかったが。

「うん。二人、実は隠れて付き合ってるんじゃないかって結構言われてたんだよ」

「そうなの? まあ、ガセだけど」

「ふーん。そっか。あ、迫戸君が隣のクラスの子を好きだって噂もあったもんね」

「うわ、やっぱバレてたんだ」

 青春時代の話題は尽きない。

 その中でも、女子はやけに恋愛事情について話したがるものらしい。

 真紀とはそんな話をしたことなかったな。



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