私の夫は王になれない俺様
こんなに苦しそうにしているのに…

どうしてそこまでやる必要があるんですか?

手合わせをしているときは、全然、わからなかった

ロバート様がこんな疲れていたなんて気付けなかった

「この…タオル…イザベラが刺繍してくれたやつか?」

私の手からタオルがするりと抜けると、ロバート様がにっこりと笑った

横になったまま、タオルで首の汗を拭いている

「あ…はい」

「ありがとう」

「いえ…」

この城に来てから覚えた裁縫で、初めて作ったものだ

ハイランドにいたときは、裁縫とか無縁の生活をしていた

父や兄に、混じって取っ組み合いの喧嘩をしたり…野山を駆け回って木の実や枝を拾ってきたり

貴族の女性らしい生活なんて、してなくて…

ロバート様の文がきてから、慌てて作法を学んだくらいだった

「今度は俺の服を縫ってくれよ」

「ええ?」

私は目を大きく開けた

まだ…そこまでの技術は…

「作ってくれるんだろ?」

そりゃあ…作れるようにならないと、いけないって言われてるし

ロバート様の服を作ってみたいって気持ちもあるけど

でも…そんな…裁縫歴の浅い私に、強い期待されても困るっていうか


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