ラビリンスの回廊


するとルクトは一瞬だけ目をみはったが、すぐにまたいつもの笑みを浮かべた表情に戻った。


「ん~と……」


否、いつもの笑みに困惑を足した表情だ。

声も、なんと説明しようか迷うかのように、ふらふらと定まらない。


「とりあえず、男性陣は見ちゃダメなかんじ?」


要領を得ないルクトの態度にしびれを切らした玲奈が、彼を睨み付けながら窓に近付く。


そのままの強い視線で小屋の中を見やると、彼女の動きも止まった。


「……」


言葉の出ない玲奈に、イシュトが苛立たしそうに舌打ちをする。


「シェル王国の奴らは使い物にならん。どれ……」


俺が見る、というイシュトに、玲奈は慌ててかぶりをふる。


「何だ」


窓から離れろと身振りする玲奈に構わず一歩踏み出したとき、ぐっと腕を捕まれた。

その行為の主はヴァン。


「男性陣は見てはならないと言えば、おおよその検討がつかない貴方ではないですよね?」


声つきも表情も穏やかだが、抵抗させない気合いを感じるそのチカラの入れように、イシュトはうっと詰まった。


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