ラビリンスの回廊
「お前は獣か」
さきに殴られたことの腹いせなのか、イシュトが睨み付けたまま嫌みを言う。
「あ゛!?てめぇ……
っつーか何でこいつらが一緒にいるんだよ!?」
そう言いながら無意識のうちに後退している玲奈に、ルクトはニヤニヤと笑っていた。
こほん、と咳ばらいをしたエマが、こうなった事情を説明したあと、ヴァンに先程の話の続きを促した。
そのエマの言葉を遮るように、イシュトが凜とした声をあげた。
「そっちの話が先だ。
話したはいいが、『紅玉』の情報がなかった、では済まされないからな」
「あ゛?そう言って、そっちこそ本当に重要な話なんだろうな?」
お互いに睨み付け合う二人をそのままに、エマとヴァンはそっと息を吐いた。
ヴァンは顔から微笑みを消し去り、エマに緊張の面持ちを向けた。
「イシュト様はああ仰ってますが、先程のお詫びも兼ねてこちらからお話し致しましょう」
そう言って「少し長くなるかもしれませんが」と前置きをし、ヴァンは話し始めた。