ラビリンスの回廊


ヴァンに事情を説明され、渋い顔をしたイシュトだったが、何も言わずに立ち上がった。


「行きましょう」


そのやり取りを見ても、無表情で歩き出すエマ。


ルクトは、エマの顔とヴァンの顔を交互に見やり、ぶるっと小さく体を震わせた。


イシュトは玲奈を睨み付けながら、それでも黙って歩き出す。


その後ろをヴァンがついて歩った。




しばらくして、一行は広い草原に出た。


なるほどここなら秘密の話をするにはもってこいの場所だろう。


周りに隠れる場所がないため、盗み聞きをされる心配はない。


エマは立ち止まり、「ひとまずここで」と言った。


イシュトはその辺にドカッと座り、片膝を立ててそこに腕を放った。


ヴァンは、ゆっくりとイシュトのそばに腰をおろした。


ルクトはそっと玲奈を草の上におろし、自分は腕組みして立っている。


エマは玲奈のそばへ座り込むと、顔を覗き込み、幾度か声を掛けた。


少し遅れて玲奈から返事があり、眩しそうに目が開けられた。


「あたし……」


そう言って、ガバリと上半身を起こす。


そして目敏くイシュトとヴァンを見つけ、声にならない声で唸った。


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