ラビリンスの回廊
ヴァンは玲奈から視線を外し、エマに微笑んだ。
「我々は戦争をよしとせず、『紅玉』で我が王の望みを消し去るつもりなのです」
「……本当に、それだけですか?」
じっと見つめるエマに、ヴァンは穏やかに頷いた。
まだ疑った様子のエマに、イシュトが言った。
「約束だ。『紅玉』について知ってることを話せ」
エマは少しためらった後、静かに語りだした。
『紅玉』の在処と言われている場所は、シェル王国とファイ王国の国境にある険しい山であり、ここから一週間ほどかかること。
もし誰かが『紅玉』を持ち出していたら、その『紅玉』が置かれていた場所に、必ず『紅玉』の行き先をたどれる何かがあること。
そして『紅玉』は、願いを叶えるとなぜかまた元の在処へ戻ってくること。
しかし殆どのものはその場で『紅玉』を使用するらしいこと。
それらは玲奈も初めてきく『紅玉』の話だった。
黙ってきいていたイシュトたちは、エマに向かって「それ以外は?」ときいたが、エマは無言で首を振った。