ラビリンスの回廊
ルクトがイシュトに笑いかける。
「じゃあ自己紹介。
俺はルクト・ベンス。ルクトって呼んで。
で、こっちがエマ・ベンス。俺の妹ね。
で、レイナ……・ベンス。いとこ」
妹だったのか!と驚いてエマとルクトを交互に見た玲奈だったが、ルクトが自分をいとこと紹介したことで、無理やり表情に出ないように落ち着かせた。
そんな玲奈をチラリと見たヴァンだったが、すぐに何事もなかったかのように自己紹介をした。
「僕はヴァンツ・クロア。ヴァンで構いません。
こちらはイシュト・ブロウニー様。金持ちのボンボンですから、多少振る舞いが普通とかけ離れているやもしれません。
ブロウニー家は我が国でも有数の富豪で、王家とも近しい関係です。
だから王の望みもわかったわけですが」
エマが何か言いたそうな素振りをしたが、すぐに口を閉じた。
肝心なことを言わないのはこちらも同じ。
きっとヴァンもそれに気付き、先程黙ったのだろう。
そしてヴァンに『金持ちのボンボン』と言われたイシュトは眉間に皺を寄せたが、特に何も言わなかった。