ラビリンスの回廊
玲奈は、辺りを警戒しながら、ゆっくりと立ち上がる。
立ち上がってわかったが、レンガは玲奈の目線よりも高い位置まで積み上がっていた。
気絶したことにより時間の感覚が全くわからないが、空の様子から、少なくとも夜でないことはわかる。
こんなところで夜を迎えたくはない。
まだ少し痛む頭を無意識に撫でながら、頭に振動が響かないよう、そっと歩き出した。
もちろん、自分がどこを目指してるのかなんてわからないし、どこを目指せばいいのかもわからない。
それでも、こんなところにいつまでも突っ立ってるわけにいかないから。
瓦礫らしいレンガに時たま足をとられつつ、むやみやたらに歩き回るしかなかった。
「ハルミとかいうやつ……覚えてろよ」
きっとハルミが、もしくは仲間が、自分をここに運んできたのだろう、と玲奈は見当をつけた。
自分に夢遊病の症状はないし、それしか考えられない。
「ちくしょう、ウゼエ」
出口の見えない迷路を歩かされてるような感覚に陥り、疲れもあって、思わず負け犬のような台詞を口にしてしまう。
意味のわからないこの境遇と、そんな台詞しか言えない自分に憤りつつ、更に歩き回るしかないかに思えた。