ラビリンスの回廊


雨が強くなってきた。


ぼたぼたと前髪から落ちる滴を拭い、額に張り付いた髪を後ろへ流す。


じっとりと雨を含んだ服に不快感が増し、更に玲奈を苛立たせた。


歩けど歩けど果てないレンガに、さすがに玲奈は疲れを覚える。


このままでは、雨で体力を消耗してしまう。


しかし、立ち止まるともう二度と動けなくなりそうで、玲奈は必死に足を動かした。


すると、体力と引き換えになったかのように、突如目の前からレンガが消えた。


いや、ただ単に、瓦礫の山から抜け出すことが出来ただけらしい。


雨に邪魔されていても、視界が少し広がるだけで、閉鎖的空間にいるよりはだいぶ、精神的に楽に感じていた。


そして初めて、自分がなだらかな丘の上にいることがわかった。


眼下には、ヨーロッパを思わせるような異国情緒のある建物が、ポツポツと点在していた。


その景色に酷く驚き、玲奈は自分が地面に囚われていく感覚に陥った。


ガクリ、と膝をつき、茫然と呟く。


「ここは、一体……?」


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