一瞬のきらめき。
始まりの春。
「じゃあ撮るよー!」





少し肌寒いけど、日差しが暖かい春の朝。





駅から徒歩10分で周りは畑が多い、都内だけど少し田舎の雰囲気も残る場所に私の家はある。




家の前の私道で買ったばかりのデジカメと格闘しながら母が私と友だちの記念写真を撮ろうとしていた。



小学校からの同級生のまなみは今日から別々の学校へ行くので朝会うことはあまりなくなるだろう。



そう。


今日は高校の入学式だ。



新しくてまだ着慣れない制服に腕を通している時だった。




ブレザーのボタンを止めていると、居間にいた母に呼ばれた。



「家の前で記念写真撮るわよ。」




母がせっかくだからと、家が近所のまなみも呼んでいた。





ーーーーパシャッ!




「また顔がひきつってるわー。もっと新生活を想像してニコニコしなさいよ。」




母が私にとってはむちゃぶりとも思えることを言ってきた。



私は記念写真が苦手だ。





笑顔を作りなさい的な雰囲気が苦手で、子供の頃から写真を撮る時は誰かの後ろに隠れたがっていたような子だった。




中学校の時、卒業アルバムにも苦い思い出がある。
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