女優デビュー
悟君とのシーンを終え、スタッフさんが次のシーンの準備をしている間、私はロケバスに戻った。

冷房の効いた空気が肌に気持ちいい。

ロケバスには学さんがいた。

他のメンバーは外で打ち合わせしているようで姿が見えなかった。

学さんはシートを倒して仮眠しているようだった。

私は起こさないように静かに乗り込んだつもりだったんだけど、気配に気づいたのか学さんが目を開けた。


「お疲れ様です。
すみません、起こしちゃって」

私が謝ると、学さんは体を起こして聞いてきた。

「いや、眠ってはいなかったから。
外暑い?」


すでに7月末で、このところ熱帯夜が続いていた。

「ええ、かなり蒸し暑いです」

「そっかあ。
夏は好きな季節なんだけど、蒸すのだけは勘弁だよなあ。
夜になったら少しは涼しいかと思ったけど、ダメかあ」

私が苦笑いしていると、窓の外に奏真君が見えた。

うーん、と伸びをした学さんも窓の外を見た。

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